このページの記事目次 (カテゴリー: 研究)
研究職として働いているので、情報収集目的で論文を読みます。
さらに部署内で1つの論文について議論する輪読会があり、月に1度担当になります。担当は議論する論文を決めて、それを詳細に読み込んで内容を紹介するスライドを作成する必要があります。
日本語の文章なら抵抗なくこれらの作業をこなせるのですが、一番の問題は論文は英語で書かれているということ。チェックするだけでも心理的ハードルがありますし、ましてや読み込むとなるとさらにハードルが上がります。
苦手なりに足掻いてきた結果、内容をさっとチェックして必要があれば精読するという流れのコツが自分の中で確立してきたのでまとめました。
振り返ると、日本語で書かれた文章の読み方と同じだったのです。

photo credit: » Zitona « via photopin cc
理系の研究者なので、研究分野によって形式が異なっていたらごめんなさい。論文は基本的に次のように構成されています。マテメソが最後に来たりなど、各項目は順番が変わる場合があります。
次のような流れでチェック、精読しています。
チェック
Title
↓
Figures & Tables
↓
Abstract
この時点で精読するか判断します。
精読
図表が登場する本文の文字を検索して線を引く
↓
ConclusionsとIntroductionの後半
↓
Materials & Methods
↓
Results & Discussion
↓
Introduction
1つ1つ詳しく見ていきます。
ここではその論文を精読するかを決めます。雑誌の最新号の目次をざっと見る状況が多いです。
まずはタイトルですね。タイトルの意味すべてを理解しようとするのではなく、単語をスキャンするイメージです。研究分野に関係する単語があったら、しっかりとタイトルを読みます。
アブストを読む前に、先にざっと図表を見ます。文章よりも図表の方がおおまかな内容を速く簡単に理解しやすいからです。
この時点では図表をつぶさに読み込むのではなく、何のデータなのかをおおまかに把握します。
ここまで来てさらに気になるのであれば、Abstractを読みます。絶対ではありませんし別の書き方もありますが、Weから始まる文章には著者が実施したことや発見が書かれている場合が多いです。
この時点で、論文を最後まで丁寧に読むかを判断します。

photo credit: photosteve101 via photopin cc
この論文を詳細まで読むと決めた場合の読み方です。私は次に示す1の作業と見やすさのため、紙に印刷しています。
読んでいて、著者の主張だと思われる大事な文章やつっこみたい内容は、該当箇所に線を引いてどんどん日本語で書き込みます。自分が後で理解できればいいので、単語や短文でかまいません。
何もしないと英文を読んだ時には理解できますが、また忘れて何度も英文を読むことになるからです。
論文に載っている図表は、必ず本文中に登場します。その部分を一目でわかるようにします。私は本文中の「Figure 1」「Table 2」といった図表が引用されている部分に蛍光ペンで線を引きます。
PDFやHTMLで閲覧できる場合に限りますが、検索機能を活用しています。「Fig」「Table」「Scheme」などの単語で検索して、ヒットした部分と紙媒体を照らし合わせて線を引きます。
こうする理由は、図表は著者の主張の土台となるものだからです。根拠となるデータを理解して、はじめて著者の主張に現実味が出てきます。
図表が登場する前後の文章は、著者がなぜそのようなデータを出したのか、そのデータから何が言えるのかといった、重要な文章が多く含まれます。
いきなりですが、結論から読みます。アブストに似ている場合もありますが、ここに著者が最も主張したいことがまとまっているからです。
著者の研究目的はIntroductionの後半に書かれる場合が多いのでここも読みます。新しい段落で、「In this study, ...」といった出だしに着目します。
実験の方法についてチェックします。慣れると標準的な手法が理解できているのでさっと読めるのですが、慣れないうちは自分の分野の勉強だと思って丁寧に読みます。
慣れないうちは、その分野の歴史や主流の研究手法が書かれているので勉強になります。ここはさっと目を通すのみの場合が多いです。
まとめますと、まずは著者の主張とその根拠を把握します。それから実験のやり方や研究背景など細かい部分を読みます。
最初から一字一句を理解する必要はありません。詳細は誤っていてもいいので、全体の大筋を把握するのが先です。そこから細かく見ていきます。日本語で書かれた文章の読み方とそう変わらないはず。
研究室に配属された時、何もかもやり方がわからなくて落ち込む毎日でした。悩まされたものの1つが、関連文献を読むことと研究分野の最新トピックを追うことでした。
何もわからなかったあの時に、最良かは別としてこのような読み方があると知っていれば、少しは楽だったのではないかと思います。そんな昔の自分や同じ立場の人に向けて今回の記事を書きました。
最初からすらすらと読めないのは誰でも同じです。諦めずに読む本数をこなせば、以前よりは必ず楽に読めるようになりますよ。
さらに部署内で1つの論文について議論する輪読会があり、月に1度担当になります。担当は議論する論文を決めて、それを詳細に読み込んで内容を紹介するスライドを作成する必要があります。
日本語の文章なら抵抗なくこれらの作業をこなせるのですが、一番の問題は論文は英語で書かれているということ。チェックするだけでも心理的ハードルがありますし、ましてや読み込むとなるとさらにハードルが上がります。
苦手なりに足掻いてきた結果、内容をさっとチェックして必要があれば精読するという流れのコツが自分の中で確立してきたのでまとめました。
振り返ると、日本語で書かれた文章の読み方と同じだったのです。

photo credit: » Zitona « via photopin cc
論文の構成
理系の研究者なので、研究分野によって形式が異なっていたらごめんなさい。論文は基本的に次のように構成されています。マテメソが最後に来たりなど、各項目は順番が変わる場合があります。
- Title(タイトル)
- Author(著者・所属)
- Abstract(要約。アブスト)
- Introduction(導入部分。イントロ)
- Materials & Methods(実験材料・方法。マテメソと略すことも)
- Results(実験結果)
- Discussion(実験結果を踏まえた考察)
- Conclusion(結論)
- References(論文中で引用した参考文献)
私の読み方
次のような流れでチェック、精読しています。
チェック
Title
↓
Figures & Tables
↓
Abstract
この時点で精読するか判断します。
精読
図表が登場する本文の文字を検索して線を引く
↓
ConclusionsとIntroductionの後半
↓
Materials & Methods
↓
Results & Discussion
↓
Introduction
1つ1つ詳しく見ていきます。
チェック
ここではその論文を精読するかを決めます。雑誌の最新号の目次をざっと見る状況が多いです。
1. Title
まずはタイトルですね。タイトルの意味すべてを理解しようとするのではなく、単語をスキャンするイメージです。研究分野に関係する単語があったら、しっかりとタイトルを読みます。
2. Figures & Tables
アブストを読む前に、先にざっと図表を見ます。文章よりも図表の方がおおまかな内容を速く簡単に理解しやすいからです。
この時点では図表をつぶさに読み込むのではなく、何のデータなのかをおおまかに把握します。
3. Abstract
ここまで来てさらに気になるのであれば、Abstractを読みます。絶対ではありませんし別の書き方もありますが、Weから始まる文章には著者が実施したことや発見が書かれている場合が多いです。
この時点で、論文を最後まで丁寧に読むかを判断します。
精読

photo credit: photosteve101 via photopin cc
この論文を詳細まで読むと決めた場合の読み方です。私は次に示す1の作業と見やすさのため、紙に印刷しています。
読んでいて、著者の主張だと思われる大事な文章やつっこみたい内容は、該当箇所に線を引いてどんどん日本語で書き込みます。自分が後で理解できればいいので、単語や短文でかまいません。
何もしないと英文を読んだ時には理解できますが、また忘れて何度も英文を読むことになるからです。
1. 図表が登場する本文の文字を検索して線を引く
論文に載っている図表は、必ず本文中に登場します。その部分を一目でわかるようにします。私は本文中の「Figure 1」「Table 2」といった図表が引用されている部分に蛍光ペンで線を引きます。
PDFやHTMLで閲覧できる場合に限りますが、検索機能を活用しています。「Fig」「Table」「Scheme」などの単語で検索して、ヒットした部分と紙媒体を照らし合わせて線を引きます。
こうする理由は、図表は著者の主張の土台となるものだからです。根拠となるデータを理解して、はじめて著者の主張に現実味が出てきます。
図表が登場する前後の文章は、著者がなぜそのようなデータを出したのか、そのデータから何が言えるのかといった、重要な文章が多く含まれます。
2. ConclusionsとIntroductionの後半
いきなりですが、結論から読みます。アブストに似ている場合もありますが、ここに著者が最も主張したいことがまとまっているからです。
著者の研究目的はIntroductionの後半に書かれる場合が多いのでここも読みます。新しい段落で、「In this study, ...」といった出だしに着目します。
3. Materials & Methods
実験の方法についてチェックします。慣れると標準的な手法が理解できているのでさっと読めるのですが、慣れないうちは自分の分野の勉強だと思って丁寧に読みます。
4. Introduction
慣れないうちは、その分野の歴史や主流の研究手法が書かれているので勉強になります。ここはさっと目を通すのみの場合が多いです。
さいごに
まとめますと、まずは著者の主張とその根拠を把握します。それから実験のやり方や研究背景など細かい部分を読みます。
最初から一字一句を理解する必要はありません。詳細は誤っていてもいいので、全体の大筋を把握するのが先です。そこから細かく見ていきます。日本語で書かれた文章の読み方とそう変わらないはず。
研究室に配属された時、何もかもやり方がわからなくて落ち込む毎日でした。悩まされたものの1つが、関連文献を読むことと研究分野の最新トピックを追うことでした。
何もわからなかったあの時に、最良かは別としてこのような読み方があると知っていれば、少しは楽だったのではないかと思います。そんな昔の自分や同じ立場の人に向けて今回の記事を書きました。
最初からすらすらと読めないのは誰でも同じです。諦めずに読む本数をこなせば、以前よりは必ず楽に読めるようになりますよ。
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2012/10/13 | Comment (4) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |
季節は3月、卒業シーズンですね。去年の終わりから今年の頭にかけて、私は博士号をとるため久々に学生のような生活になっていました。その過程で自分の学位論文を製本するという作業がありましたが、思いのほか情報がなく苦労したので、注意点を交えつつ自分の体験談をつづります。

製本には大きく2種類あります。表紙の違いで、ハードカバーとソフトカバーになります。ハードカバーは大抵黒か紺色で金文字が入っており、固くしっかりした表紙です。ソフトカバーは色のついた紙で原稿を包んでいるもので、学会の要旨集でよく見られるタイプです。今回、私は両方のタイプを注文しました。

簡単に書くと、次の流れになります。
原稿を完成させる
↓
印刷所を決める
↓
見積をとって納期と金額を確認
↓
データと紙のコピーを送る(データのみのところもあり)
↓
製本の受け取り。中身を確認して問題がなければ代金支払。
締切りが近づいていて時間がない場合は、原稿を書きつつ並行して印刷所を決めて見積をとった方がいいです。ハードカバーの表紙作成に時間がかかる場合もあります。
原稿枚数やカラーページ枚数が不明でも、完成時の大まかなページ数で見積はとってもらえます。
1/24が製本した論文の〆切です。まずは印刷所探し。研究室御用達の印刷所があるのですが、自分が住んでいる場所が大学からやや遠いため、自分の住まいの周辺、もしくは郵送でやりとりできるところを探しました。また原稿納品~製本受け取りの期間をできるだけ短くしたかったため、納期 > 値段の基準で探しました。
langsam : 学術論文の製本をしてくれる業者を横断的に調べてみた - livedoor Blog(ブログ)
こちらのページを元に、またいくつかブログを見て評判もよかったので日本文書さんに頼むことにしました。ホームページも見やすく、個々のオプションに対する金額がきちんと提示されているので安心感があります。いざとなれば1割増しで特急製本も可能です。
学位論文の原稿はまだ修正中でしたが、論文のタイトルとおおまかな枚数で見積をとりました。製本の冊数は、ハードカバー8冊、ソフトカバー4冊(学務提出用、教授陣、職場の上司、家族、自分)です。
翌日見積のお返事をいただきました。「もし承る場合は、希望している納期が作業時間を考えるとぎりぎりなため、先にハードカバーの表紙を作成します。」とのことでした。そしてタイトルの文字数が多いため、鋳型が特注で追加料金になりました。タイトルを変更できればよかったのですが、このタイトルですでに学位を申請しているため、おいそれと変えられるものではありません。
納品のため、原稿データをCDに焼いたものと実際に紙に印刷したもの1部を用意します。原稿データはEメールで添付して入稿も可能でしたが、紙の出力見本も必要ということでしたので、どのみち郵送は行うことになります。wordファイルとPDFファイルを保存したCDを用意して、原稿1部と共に送りました。また、日本文書さんがたまたま土日がお休みで納期がぎりぎりのため、特急製本でお願いしました。
九段下にある日本文書さんのところへ直接伺って、製本受け取りと支払をすませ、その足で大学へ。無事提出できてほっと一安心です。しかし、この後に事件が…。

ぱらぱらと製本した論文を見ていたら、引用文献のところに不自然な□が…。wordファイル、PDFファイル、自分で印刷した出力見本を確認したら□はなし。
論文の主旨とは関係ないため、見なかったことにしようか迷いました。しかし、そこそこのお金を出してお願いしていることと、出力見本も渡した上でのこの状態でしたので、勇気を出して日本文書さんに連絡したところ、丁重なお詫びをいただきすぐに作り直してもらえることになりました。表紙を再利用するそうで、手持ちの製本を着払いで発送しました。
急ぎの対応が必要だったのが学務に提出した分でしたので、その分は日本文書さんから直接送っていただきました。後日、学務から回収した製本を日本文書さんへ送り、自分の元へ送っていただきました。これで一件落着です。
********************
日本文書さんは、メールも頻繁にくださいますし、こちらの都合で納期が変わってしまった時や□事件の時も、都度丁寧に対応してくださいました。価格が安いところはもっとあるのかもしれませんが、対応が悪くては元も子もないので、安心して使えるおすすめの会社です。
株式会社日本文書:論文製本
自分の体験を通して、伝えたいことを9つにまとめてみました。
1. 学務からの規定を確認しよう
表紙・背表紙の書き方、見返しの有無、色などは全大学で統一されておらず、大学独自の規定になっています。数万円かけて製本して提出しにいったら、規定に沿っていなかったため突き返されたという笑えない話もありますので要確認です。
同じ研究室の先輩の学位論文を借りておくと、謝辞の書き方など何かと参考になるのでおすすめです。不明な点があったら、積極的に学務に尋ねましょう。
2. まとまったお金を用意しておこう

Look after the pennies and the pounds will look after themselves
製本する冊数にもよりますが、それなりのお金がかかります。私の場合、ハードカバー8冊、ソフトカバー4冊、中身の印刷は印刷所に任せる形で約7万円かかりました。製本の中身も自分で印刷して持ち込むと、多少安くなります。また乙号で申請する場合は、審査料57,000円がかかります。
印刷所ではクレジットカードが使えない場合もありますので、まとまった額を現金で用意しておきます。
3. 先生・先輩・後輩、とにかく他人に見てもらおう
構成の段階から早め早めの相談を。わかりづらさや誤字脱字は自分で書いていると本当に気がつかないので、見てもらえるだけでありがたいです。
4. 印刷会社は早めに選ぼう
ポイントは納期、値段、受け取り方法(直接来店 or 配送)ですね。研究室や大学でよく使われている印刷所は、ややお値段が高い反面、規定を熟知していることが多いです。私の特注鋳型のように予想以上に時間がかかる場合もありますので、早めに動くことをおすすめします。
5. 論文のタイトルは短めに
深く考えずに決めた論文のタイトルでしたが、文字数が多く通常の鋳型だと背表紙に入りきらないということで鋳型を特注することになり、時間も追加料金もかかりました。
印刷所によっても異なると思いますが、短くすっきりしたタイトルですむならそちらがおすすめです。
6. 納品前の誤字脱字チェックを忘れずに

大学で保管されたり国会図書館に寄贈されるため、一生そのミスが残ります。最近は電子媒体でも保存されます。頭がクリアな時に、もう1度見直ししましょう。余裕がある時は、音読すると間違いに気がつきやすいです。
7. 印刷の時間も忘れずに
1部印刷する場合でも、ページ数がそれなりにあると意外に時間がかかります。原稿を自分で印刷して納品の場合はさらにですね。急いでいる時に、その時間を見落としがちなので注意。
8. 製本後もしっかりチェック
体験記に書いたように、電子データや自分が用意したハードコピーに問題はなくても、印刷所で印刷した時に落丁、乱丁、絵の色調が違うなどその通りにならない場合もありえます。気を抜かず最後までチェックを!
9. お礼を忘れずに

Thank you!
製本が終わった時、さらに学位を授与された時、一旦立ち止まってここまでの道のりを思い返してください。
論文を書いている最中は自分のことで手一杯だったりしますが、指導してくれた教授陣、意見をくれた同僚・研究室メンバー、執筆を支えてくれた家族、学位論文への使用許可をくれた投稿論文の共著者の方々…多くの人によってここまで来ることができたはずです。
直接、あるいは手紙やメールで「おかげさまで学位を取得することができました。ありがとうございます」とぜひ報告してください。きっと喜ばれると思います。
製本は思いの外大変な作業でしたが、新鮮で面白く、いい経験になりました。論文でなくても製本はできますので、自分で書いた何かを形に残したい時はソフトカバータイプはお手頃かも。
もし学位論文関係の検索でこの記事を見に来られた方へ。とりあえず書けば何かしら進みますから。構成に悩んでいる場合でも、あとから削ったり、順番を変えたりいくらでも変えられます。製本までいけばゴールはもうすぐです。がんばってください!
製本とは?

製本には大きく2種類あります。表紙の違いで、ハードカバーとソフトカバーになります。ハードカバーは大抵黒か紺色で金文字が入っており、固くしっかりした表紙です。ソフトカバーは色のついた紙で原稿を包んでいるもので、学会の要旨集でよく見られるタイプです。今回、私は両方のタイプを注文しました。
大まかなスケジュール

簡単に書くと、次の流れになります。
原稿を完成させる
↓
印刷所を決める
↓
見積をとって納期と金額を確認
↓
データと紙のコピーを送る(データのみのところもあり)
↓
製本の受け取り。中身を確認して問題がなければ代金支払。
締切りが近づいていて時間がない場合は、原稿を書きつつ並行して印刷所を決めて見積をとった方がいいです。ハードカバーの表紙作成に時間がかかる場合もあります。
原稿枚数やカラーページ枚数が不明でも、完成時の大まかなページ数で見積はとってもらえます。
製本体験記 ~自分の場合~
1/24が製本した論文の〆切です。まずは印刷所探し。研究室御用達の印刷所があるのですが、自分が住んでいる場所が大学からやや遠いため、自分の住まいの周辺、もしくは郵送でやりとりできるところを探しました。また原稿納品~製本受け取りの期間をできるだけ短くしたかったため、納期 > 値段の基準で探しました。
こちらのページを元に、またいくつかブログを見て評判もよかったので日本文書さんに頼むことにしました。ホームページも見やすく、個々のオプションに対する金額がきちんと提示されているので安心感があります。いざとなれば1割増しで特急製本も可能です。
学位論文の原稿はまだ修正中でしたが、論文のタイトルとおおまかな枚数で見積をとりました。製本の冊数は、ハードカバー8冊、ソフトカバー4冊(学務提出用、教授陣、職場の上司、家族、自分)です。
翌日見積のお返事をいただきました。「もし承る場合は、希望している納期が作業時間を考えるとぎりぎりなため、先にハードカバーの表紙を作成します。」とのことでした。そしてタイトルの文字数が多いため、鋳型が特注で追加料金になりました。タイトルを変更できればよかったのですが、このタイトルですでに学位を申請しているため、おいそれと変えられるものではありません。
納品のため、原稿データをCDに焼いたものと実際に紙に印刷したもの1部を用意します。原稿データはEメールで添付して入稿も可能でしたが、紙の出力見本も必要ということでしたので、どのみち郵送は行うことになります。wordファイルとPDFファイルを保存したCDを用意して、原稿1部と共に送りました。また、日本文書さんがたまたま土日がお休みで納期がぎりぎりのため、特急製本でお願いしました。
九段下にある日本文書さんのところへ直接伺って、製本受け取りと支払をすませ、その足で大学へ。無事提出できてほっと一安心です。しかし、この後に事件が…。

ぱらぱらと製本した論文を見ていたら、引用文献のところに不自然な□が…。wordファイル、PDFファイル、自分で印刷した出力見本を確認したら□はなし。
論文の主旨とは関係ないため、見なかったことにしようか迷いました。しかし、そこそこのお金を出してお願いしていることと、出力見本も渡した上でのこの状態でしたので、勇気を出して日本文書さんに連絡したところ、丁重なお詫びをいただきすぐに作り直してもらえることになりました。表紙を再利用するそうで、手持ちの製本を着払いで発送しました。
急ぎの対応が必要だったのが学務に提出した分でしたので、その分は日本文書さんから直接送っていただきました。後日、学務から回収した製本を日本文書さんへ送り、自分の元へ送っていただきました。これで一件落着です。
********************
日本文書さんは、メールも頻繁にくださいますし、こちらの都合で納期が変わってしまった時や□事件の時も、都度丁寧に対応してくださいました。価格が安いところはもっとあるのかもしれませんが、対応が悪くては元も子もないので、安心して使えるおすすめの会社です。
学位論文の製本にあたり、9つの注意すること
自分の体験を通して、伝えたいことを9つにまとめてみました。
1. 学務からの規定を確認しよう
表紙・背表紙の書き方、見返しの有無、色などは全大学で統一されておらず、大学独自の規定になっています。数万円かけて製本して提出しにいったら、規定に沿っていなかったため突き返されたという笑えない話もありますので要確認です。
同じ研究室の先輩の学位論文を借りておくと、謝辞の書き方など何かと参考になるのでおすすめです。不明な点があったら、積極的に学務に尋ねましょう。
2. まとまったお金を用意しておこう

Look after the pennies and the pounds will look after themselves
製本する冊数にもよりますが、それなりのお金がかかります。私の場合、ハードカバー8冊、ソフトカバー4冊、中身の印刷は印刷所に任せる形で約7万円かかりました。製本の中身も自分で印刷して持ち込むと、多少安くなります。また乙号で申請する場合は、審査料57,000円がかかります。
印刷所ではクレジットカードが使えない場合もありますので、まとまった額を現金で用意しておきます。
3. 先生・先輩・後輩、とにかく他人に見てもらおう
構成の段階から早め早めの相談を。わかりづらさや誤字脱字は自分で書いていると本当に気がつかないので、見てもらえるだけでありがたいです。
4. 印刷会社は早めに選ぼう
ポイントは納期、値段、受け取り方法(直接来店 or 配送)ですね。研究室や大学でよく使われている印刷所は、ややお値段が高い反面、規定を熟知していることが多いです。私の特注鋳型のように予想以上に時間がかかる場合もありますので、早めに動くことをおすすめします。
5. 論文のタイトルは短めに
深く考えずに決めた論文のタイトルでしたが、文字数が多く通常の鋳型だと背表紙に入りきらないということで鋳型を特注することになり、時間も追加料金もかかりました。
印刷所によっても異なると思いますが、短くすっきりしたタイトルですむならそちらがおすすめです。
6. 納品前の誤字脱字チェックを忘れずに

大学で保管されたり国会図書館に寄贈されるため、一生そのミスが残ります。最近は電子媒体でも保存されます。頭がクリアな時に、もう1度見直ししましょう。余裕がある時は、音読すると間違いに気がつきやすいです。
7. 印刷の時間も忘れずに
1部印刷する場合でも、ページ数がそれなりにあると意外に時間がかかります。原稿を自分で印刷して納品の場合はさらにですね。急いでいる時に、その時間を見落としがちなので注意。
8. 製本後もしっかりチェック
体験記に書いたように、電子データや自分が用意したハードコピーに問題はなくても、印刷所で印刷した時に落丁、乱丁、絵の色調が違うなどその通りにならない場合もありえます。気を抜かず最後までチェックを!
9. お礼を忘れずに

Thank you!
製本が終わった時、さらに学位を授与された時、一旦立ち止まってここまでの道のりを思い返してください。
論文を書いている最中は自分のことで手一杯だったりしますが、指導してくれた教授陣、意見をくれた同僚・研究室メンバー、執筆を支えてくれた家族、学位論文への使用許可をくれた投稿論文の共著者の方々…多くの人によってここまで来ることができたはずです。
直接、あるいは手紙やメールで「おかげさまで学位を取得することができました。ありがとうございます」とぜひ報告してください。きっと喜ばれると思います。
さいごに
製本は思いの外大変な作業でしたが、新鮮で面白く、いい経験になりました。論文でなくても製本はできますので、自分で書いた何かを形に残したい時はソフトカバータイプはお手頃かも。
もし学位論文関係の検索でこの記事を見に来られた方へ。とりあえず書けば何かしら進みますから。構成に悩んでいる場合でも、あとから削ったり、順番を変えたりいくらでも変えられます。製本までいけばゴールはもうすぐです。がんばってください!
(記事編集) http://toyu3.blog.fc2.com/blog-entry-21.html
2012/03/31 | Comment (2) | Trackback (0) | ホーム | ↑ ページ先頭へ ↑ |